ヨーカン長屋から

日暮れにたどる小野家の食卓

純粋なふたり

土曜日の朝、新太の水泳教室の時間に日本の妹から電話がきた。

涙声で「お姉ちゃん、今だいじょうぶ?」
緊張。視線は新太のスイミングに固定したまま先を促すと「ママがだめみたい。最期にお姉ちゃんと話したいって」

母は昨年二度入院した。大事には至らなかったが、持病の心臓、視力、リウマチを抱えて70歳を迎え、晩年に入った。わたしの方から電話する回数も増えた。

電話口に母が出る。今日お父さんが出かけている間に頭がくらくらしてきて、鼻血が止まらない。これはだめだな、という感じが自分の体だからわかるのだと言う。

背泳ぎする新太をぐっと睨みながら聞いたばかりの声を高速で巻き戻し、再生。判断する。
よし、わたしもわかる。お母さんは大丈夫だ。

確かな手がかり待って黙しながら、実際危ないのだとしたら、とも考える。やがて母の方から葬式は密葬にして欲しい、親類、盲人協会のみなさんにも言わないで欲しい、あんた達ふたりのことはお父さんに・・・といつもの死後談の調子が出てきた。続いて、ガンを患っていた箱根のお兄ちゃんが先日亡くなったと。ああ死神の影はこれであったか。それから「この電話のこと達也さんに言わないで」とぶっきらぼうになって電話を妹に渡した。わたしは妹を励まして電話を切った。

翌日妹に電話をかけて状況をくわしく聞く。やはり寒さで弱ったところに身内の不幸が重なり怖かったのであろう。今まで聞いたことのない母の生い立ちの話などはじめたので妹が先に動揺してしまったらしい。母もそれに応えるようにふと旅立ちの心持ちになった。そこに鼻血が出てふたりでパニック、一向に血が止まらずそのまま死んでしまうと思ったようである。激情型母娘。想像通りの想像力。
家族のドラマはまだまだ続く。がんばれ。春になったら待望の姉、里帰りである。

昼食 回鍋肉、ごはん

夕食 ツナとわかめの炒飯、豆腐のお吸い物

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純粋なふたり」への3件のフィードバック

  1. まゆこ 2013年1月28日 3:29 pm

    意外な展開にびっくり。面白がっていいのかわからないけど面白かったのでついコメント。がんばれ!

  2. kazuebi 2013年1月28日 9:15 pm

    面白がっていいよ。おばけの話して怖くなっちゃったこどもです。まだまだ魂燃えてるじゃん、地面に足ついてるじゃん、て本当に嬉しい笑いです。

  3. june 2013年2月1日 11:46 am

    お、それは待望の春!

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